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最高裁判所第三小法廷 昭和37年(オ)254号 判決 1964年5月26日

上告人

福井芳松

右訴訟代理人

小倉慶治

被上告人

岩井由造

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

<前略>

上告代理人小倉慶治の上告理由第三点について。

原判決主文第一項は、「控訴人に対し原判決主文第一項記載の家屋を明渡し云云」と記載し、第一審判決主文第一項は「被告は原告に対し大阪市城東区永田町三百十一番地の一地上家屋番号同町一〇九番、木造スレート葺二階建居宅一棟建坪二十二坪六合二勺二階坪二十二坪一合二勺、木造スレート葺平家建居宅一棟建坪五坪五合二勺、木造スレート葺二階建工場一棟建坪八坪四合二階坪七坪九合を明渡し云云」と記載するから、彼此対比すれば、原判決において、控訴人に対しいかなる家屋の明渡を命じたかは明らかである。控訴判決の主文において物件を表示するにつき、第一審判決に掲げる物件の表示を援用してこれを表示することは差支えないと解すべきであるから(大審院明治四三年(オ)第二五二号明治四三年一二月一六日判決民録一六輯九三〇頁参照)、原判決に所論民訴法一九一条に違反する違法がなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官田中二郎 裁判官石坂修一 横田正俊 柏原語六)

上告代理人小倉慶治の上告理由

<前略>

第三、原判決はその主文に於て「控訴人は被控訴人に対し原判決主文第一項記載の家屋を明渡し言々」と記載されているが、原判決自体からはその明渡すべき家屋が明らかでなく右判決は民事訴訟法第百九拾壱条に違反する不法がある。(大審昭和八年(オ)二三九九号、同九年一二月一九日民四判、裁判例(八)民三〇三頁参照)

以上の理由により原判決は破棄を免れない。

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